左同名半盲とは

両目の左側が見えにくくなる理由

画像説明

人が物を見るということは、
目だけではなく脳で処理された結果だと説明しました。
人は目だけで見ているわけではない

ここからは、その続きとして、
「左同名半盲」について分かりやすく説明します。

名前だけを見ると、とても難しそうに感じるかもしれません。

左同名半盲。

漢字も多いし、医学用語なので、
初めて聞く人には少しとっつきにくい言葉です。

でも、内容を一つずつ分けて考えると、
仕組みは少し分かりやすくなります。

左同名半盲は、左目だけの問題ではない

まず大切なのは、
左同名半盲は「左目だけが見えない」という意味ではない、ということです。

ここはとても誤解されやすいところです。

「左」と聞くと、
左目が悪いのかな?
と思う人もいるかもしれません。

でも左同名半盲では、
左目だけでなく、右目でも左側の視野が見えにくくなります。

つまり、

右目で見ても、左側が欠ける。
左目で見ても、左側が欠ける。

このように、両目で同じ側の視野が見えにくくなる状態です。

だから「同名」という言葉が使われます。
左右の目で、同じ側の視野に問題が出るという意味です。

視野とは、見えている範囲のこと

ここで「視野」という言葉も確認しておきます。

視野とは、目を動かさずに見えている範囲のことです。

正面を見たままでも、
なんとなく左右の様子が分かることがあります。

横から人が近づいてきた。
車が横を通った。
手元の少し横に物がある。

こうした周りの見え方も視野に含まれます。

視力は、文字や細かいものをどれだけはっきり見られるかに関係します。
一方で視野は、どれだけ広い範囲が見えているかに関係します。

だから、視力が良くても、
視野が欠けていることはあります。

ここも、とても大切なポイントです。

なぜ右脳の障害で左側が見えにくくなるのか

では、なぜ右側の脳に障害が起こると、
左側の視野が見えにくくなるのでしょうか。

これには、目から脳へ向かう情報の通り道が関係しています。

私たちの目に入った情報は、
そのまま同じ側の脳だけに送られるわけではありません。

途中に「視交叉」という場所があります。

視交叉では、
一部の神経が左右に交差します。

この交差のおかげで、
左側の視野の情報は右脳へ、
右側の視野の情報は左脳へ送られるようになっています。

少し不思議に感じるかもしれませんが、
脳では左右が交差して処理される仕組みがいくつもあります。

視覚もその一つです。

左側の視野は、右脳で処理される

ここが一番大事なところです。

本人から見て左側にあるもの。
つまり左側の視野の情報は、
右目から入っても、左目から入っても、
最終的には右脳で処理されます。

たとえば、左側に人が立っているとします。

その人の情報は、右目にも入ります。
左目にも入ります。

でも、その「左側の視野」の情報は、
脳の右側へ送られます。

そのため、右脳の後ろにある後頭葉、
特に右視覚野が傷つくと、
左側の視野の情報をうまく処理できなくなります。

すると、両目とも左側が見えにくくなります。

これが、左同名半盲です。

右目の左側、左目の左側が見えにくくなる

左同名半盲では、
右目だけで見ても左側が欠けます。
左目だけで見ても左側が欠けます。

つまり、目そのものが片方だけ悪いというより、
脳で処理される「左側の視野」の情報に問題が起きている状態です。

分かりやすく言うと、

右目の左側の視野
左目の左側の視野

この両方が、右脳で処理されています。

そのため、右後頭葉の視覚野や、
そこへ向かう視覚路が傷つくと、
左側の視野が両目で見えにくくなります。

見えていないのに、周りからは分かりにくいことがある

左同名半盲がややこしいのは、
周りから見ても分かりにくいことです。

目が開いている。
会話もできる。
正面のものは見えている。
スマホも見ている。
歩いているように見える。

そうすると周りの人は、
「普通に見えているんじゃないの?」
と思ってしまうことがあります。

でも実際には、
本人から見ると左側の情報が抜け落ちていたり、
気づきにくかったりします。

そのため、人や物にぶつかりやすくなったり、
左側にある物を見落としたり、
文章を読むときに行の始まりが分かりにくかったりすることがあります。

ただし、本人は首や目を動かして補うことがあります。

左側が見えにくいから、
無意識にキョロキョロする。
体の向きを変えて確認する。
時間をかけて探す。

そうやって努力していると、
周囲からは「見えているように見える」こともあります。

でもそれは、問題がないという意味ではありません。

視力が良いことと、視野が広いことは別

左同名半盲を理解するうえで、
もう一つ大事なのが、視力と視野の違いです。

視力は、細かいものをはっきり見る力です。
たとえば、視力検査で小さな輪の切れ目を答える力です。

一方で視野は、
どの範囲まで見えているかという広さの問題です。

だから、視力検査では良い結果が出ても、
視野に欠けがある場合があります。

これは、
「文字は読めるのに、横から来る人に気づきにくい」
「正面は見えるのに、左側の物を見落とす」
ということが起こり得るということです。

視力が良いから大丈夫。
普通に見えているから問題ない。

そう簡単には言えないのです。

視覚野の中でも、場所ごとに役割がある

脳の後ろにある視覚野では、
視野の情報が場所ごとに整理されて処理されています。

たとえば、
上の視野は、下側の視覚野で処理されます。
下の視野は、上側の視覚野で処理されます。

また、中心の視野は、
後頭葉の一番後ろの方で細かく処理されます。

中心視野とは、
文字を読んだり、人の顔を見たり、細かいものを見るときに重要な部分です。

一方で、周辺の視野は、
より前方の視覚野で処理されます。

このように、脳の中では、
見えている範囲がかなり細かく分かれて処理されています。

だから、脳のどの場所が傷ついたかによって、
見え方の困りごとも変わってきます。

左同名半盲を簡単にまとめると

左同名半盲とは、
両目とも左側の視野が見えにくくなる状態です。

左目だけの問題ではありません。
右目だけの問題でもありません。

左側の視野の情報が、
右脳で処理されているため、
右後頭葉やその手前の視覚路に障害が起こると、
両目で左側が見えにくくなります。

そしてこの見えにくさは、
周りからは分かりにくいことがあります。

正面は見えている。
会話もできる。
スマホも見られる。
歩いているように見える。

それでも、左側の視野が欠けていることで、
日常生活ではたくさんの困りごとが起こります。

まとめ

人が物を見るということは、
目だけで完結しているわけではありません。

目で受け取った情報は、
脳へ送られ、後頭葉の視覚野で処理されます。

左同名半盲は、
その視覚情報の通り道や、脳の処理に問題が起こることで生じます。

見えているように見えても、
実は見えていない部分がある。

本人はそれを補うために、
目を動かしたり、首を振ったり、何度も確認したりしています。

だからこそ、
「見た目では分からない見えにくさ」があることを、
少しでも多くの人に知ってもらえたらと思います。